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ミックス・マスタリングを簡単に「Music Production Suite 5.1」レビュー

今やミックス・マスタリングには欠かせないツールとなったiZotopeのプラグイン。その中でもマスタリングの「Ozone」、ミックスの「Neutorn」、オーディオリペアの「RX」は、アマチュアからプロまで、音楽をする人ならぜひとも持っておきたいプラグインです。そんな3つのプラグインを含むiZotopeのプラグインバンドルが「Music Production Suite」です。今回は僕も持っているこのプラグインバンドルについて解説しています。


AI &プラグイン連携に優れた「Music Production Suite」

マスタリングツールの「Ozone」、ミックスツールの「Neutorn」、オーディオリペアツールの「RX」、ボーカル専用ミックスツールの「Nectar 3 Plus」などが含まれたバンドルです。AI機能でミュージシャンをサポートしてくれるだけでなく、各プラグインを連携させて、マスキングや全体のバランスを簡単に調整することができます。オールド系機材の特徴的な効果がほしいという場合以外は、iZotopeのプラグインだけでスッキリしたミックスが可能です。さらにサラウンドに対応したリバーブや、グループ会社のBrainworx社製プラグインもセットになって、お得度が上がっています。
いきなりこのプラグインを買うのは価格的にハードルが高いですが、iZotopeは2〜3年ごとにアップグレードしますので、Ozoneなどを買って使い方に慣れてからこのバンドルにするという手もあります。
それでは各プラグインを紹介していきます。

AIマスタリングツールの決定版「Ozone 10 Advanced」

AIのサポートでマスタリングを簡単にしてくれるツールです。Ozone5から使っているんですが、昔はマキシマイザーで音圧が上がるちょっぴりデジタル臭いプラグインでした。けれど現在は非常にクリアで音楽的にマスタリングできるツールになっています。特にAI機能や他の楽曲のトーンバランスを分析してそれを当てはめられる機能が優秀で、CDなどで聞くあの感じを再現できます。またプリセットも豊富にあり、こちらから理想のマスタリングを見つけて調整していくことも可能です。また操作も簡単だし、こだわりたい人には細かな設定ができるようにもなっています。
音圧競争が終わり、様々なラウドネス規制がある時代。より音楽的に、よりクリアで美しいマスタリングを行うための必須ツールです。

AIのサポートでミックスを簡単に「Neutron 4」

AI機能で、ミックスをスピーディに仕上げていけるツールです。トラックの音を読み込ませるだけで何の楽器かを分析し、それに合うエフェクトを配置・調整。全体のバランス調整も簡単だし、被っている帯域を棲み分けるマスキングも簡単にできます。特にEQやコンプの使い方がわからない初心者の方でも、スムーズに狙い通りの音に仕上げることもできるので、最初のミックスツールとしても最適です。オールド機材の特性が欲しい場合以外は、このプラグインだけでミックスできる優秀なツールです。

ノイズのないクリアな音声に「RX 10 Standard」

録音時に入るノイズを除去し、音声をキレイに整えるオーディオリペアツールです。ボーカルのオーディオリペアならStandardで十分で、簡単な操作でホワイトノイズもポップノイズも取り除くだけでなく、キレイに補完してくれるので、録音環境が悪いアマチュア歌い手のデータでもクリアな音声に整えることができます。歌ってみたのミックスで何度か使用してみましたが、環境ノイズやエアコンのノイズもキレイにすることができて驚きました。まずキレイに録音することが重要だと思いますが、なかなかいい環境で録音できないアマチュアミュージシャンの方には役立つツールだと思います。

調整が簡単な新時代のリバーブ「Neoverb」

AIの分析でオーディオ素材を分析し、最適なリバーブ設定の土台を作り上げてくれるリバーブです。アーリーリフレクション、プレート、ルーム、ホールなど3つのリバーブを組み合わせて残響音を作り上げられるだけでなく、プレEQ、リバーブEQを使って不要な残響音を処理することもできます。使ってみるとわかるんですが、プリセットも豊富だし使い方も簡単ですので、キレイな音源を目指す場合にはこのプラグインは最適だと思いました。オールド機材の特性を出したい場合やアナログ感を付加したい場合は他のプラグインで補完したり、別のリバーブがいいとは思いますが、使いやすさを考えるとこちらの方が優秀だと思います。ぜひ導入して欲しいリバーブです。

ボーカルを際立たせる「Nectar 3 Plus」

AIによる分析でボーカルのミックスを際立たせることができるプラグインです。EQ、コンプ、ディエッサー、リバーブに至るまで、様々なプラグインがセットになっているので、素早くボーカルミックスを完成させることができます。またダブリングやハーモニーの生成も簡単。個人的にいいなと思ったのがマスキング機能で、ボーカルと帯域がかぶるトラックを指定するだけで、AIがそのトラックのNeutron内のEQでマスキングをすることができました。マスキングは初心者だとやり過ぎてしまうことも多いので、こういう機能があるのはありがたいです。オールド機材の特性を活かした音作りが必要ない場合は、キレイなボーカルミックスを作れるこのプラグインの調整で十分だと思います。

様々な効果を出せるボーカルエフェクト「Vocal Synth 2」

ボーカル専用のエフェクトプラグインです。ロボット系、MIDIで操作できるボコーダー系サウンド、フォルマントを変えたハーモニーなどを作り出すことができます。ポップな曲で雰囲気を変えたい時だったり、エレクトリカルな曲ではかなり使えるプラグインです。ボカロとも相性がいいので、行き詰まった時に使ってみると、曲に違う角度からインパクトを与えることができます。またNectarに搭載されたハーモニー機能よりも複雑な音を作り出すことが可能なので、厚みのあるデジタル的なハーモニやダブリングにも効果的。使い方次第で楽曲を面白くしてくれるエフェクトだと思います。

ジャンルに合うバランス調整を「Tonal Balance Control 2」

Ozone9 11

全体的なバランス調整を視覚的に行えるツールです。ジャンル別のバランステンプレートや読み込んだ参考曲のバランスをベースに、現在の楽曲のバランスを比較分析できるツールです。iZotope製のプラグインと連携もできるので、このプラグインからEQなどを調整することができます。あらゆるツールをiZotope製で行なっているツールだと思います。僕はメーター的に使ってみましたが、ちゃんとミックスしているとジャンル別のテンプレート通りになっていることが多いです。初心者の方で全体バランスの調整がまだできない方は、このツールで全体バランスのフォーマットを身につけることができると思います。

ボーカルや単音楽器のピッチ修正に「Melodyne essential」

サードパーティ製のピッチ修正ソフトのエントリー版です。エントリー版と言いながら短音楽器などの基本的なピッチ修正はできるので、ボーカル+打ち込みの楽曲制作なら必要十分なプラグインです。僕はCubase標準のVariAudioを使うことが多いんですが、もしピッチ修正ソフトがない方にはうれしいプラグインです。

「Insight 2」

非常に多機能なメータープラグインです。音圧を示すラウドネスだけでなく、明瞭さを示すメータなどもあり、面白いです。ただ音楽制作で使うよりは、放送系のポストプロダクションで使うメーターという感じですので、音楽だけやっている人には不必要な部分も多いと思います。最近、僕の場合はミックス・マスタリングプラグインの表示がかなりよくなっているので、こういうメーターは最終のラウドネス調整対策に使うくらいになってます。僕はラウドネスの最終調整を動画ソフトで行うのですが、ラウドネスメーターがあれば十分なので、これはあまり使っていません。

サラウンドリバーブ

iZotopeの傘下に入ったExponential Audioのリバーブで、22.2チャンネルまで対応することができます。サラウンド環境を意識しない人には必要ないかなとも思うのですが、ステレオでも使えますので興味のある人は使ってみてください。個人的にはステレオの音楽制作がメインなので使わないリバーブです。Neoverbがかなり良かったので、そちらメインで使っていきます。

Symphony 3D

Symphony3d

R4というリバーブの3D版です。

Stratus 3D

Stratus3d

Nimbusというリバーブの3D版です。

Brainworx製プラグイン

iZotopeのグループ会社、Brainworx社のプラグインがバンドルに加わりました。ミックスで活躍するエフェクトというよりは、音作りや曲作りで活躍するエフェクトが多いです。オールドな見た目ですが触ったら効果もわかるし操作も簡単。古いインターフェイスデザインで判断してはいけないプラグインでした。

bx_delay 2500

Delay2500

多機能なステレオディレイです。アタックを判別して伸ばしている音にディレイをかけるダッキング機能もついてるので、ギターソロなどにかけると効果高いと思います。

bx_boom!

Boom

キック専用のプラグインです。操作できる部分も少ないので、ちょっと音が物足りないなと思った時に使ってみると効果高いです。

bx_saturator V2

Bx saturator

マルチバンドサチュレーションと書かれていましたが、帯域はハイとローだけのシンプルな構造です。特徴的なのはMidとSideに分けて処理できるところで、使い方も効果もわかりやすいです。かけ過ぎ注意なプラグインだと思いました。

bx_subsynth

Subsynth

サブハーミックシンセdbx 120XPをモデルに製作されたプラグインです。ベースの低域を補強するだけなく、サブペースを足したような加工もできるので、ベース音全般に使えるプラグインだと思います。

bx_cleansweep Pro

Cleensweep

ハイパス、ローパス、2つのフィルターのカットオフをレバーで操作するプラグインです。フィルター形状などを選んで動かすだけで非常にシンプルで使いやすいです。エレクトロな曲で使うと効果高いと思いました。

bx_refinement

Refinement

真空管を通したような効果で、耳に刺さる音を和らげるプラグインです。音の角を丸くしていくタイプなので、かけ過ぎると音が弱くなると思いました。全体の音はいいけどちょっときつい音があるなという時にかけると効果的だと思います。

音楽制作には最適なバンドル

ミックスからマスタリングのプラグインに強いiZotope製プラグインに加えて、曲作りに彩りを添えてくれるBrainworx製プラグインが加わったことで、より音楽的に、より簡単に音質をアップできるようになりました。クリアにバランスよくミックスしたいのであれば、このプラグインバンドルがあれば十分だと思います。
また初心者の方にはWavesのプラグインを組み合わせてミックスをするよりも手っ取り早くミックスを仕上げることができると思います。
日本法人ができてから頻繁にセールをしていますので、ぜひタイミングがあれば手に入れてみてください。



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