僕はギター音源をいくつか持っているんですが、その中でも一番リアルにエレキギターを打ち込みで再現できるのが、Vir2の「Electri6ity」です。この音源が出た時にすぐに買ってたんですが、実は使いこなす時間がなく、ようやく最近になって使い始めることができたので、ご紹介していきたいと思います。
目次
メーカーのVir2とは
生楽器に近いサンプリング音源を作るメーカーです。エレキギター音源の「Electri6ity」、アコースティックギター音源の「ACOU6TICS」、ホーンセクション音源の「MOJO2」などが有名ですね。僕はBasisというベース音源を買ったのが一番最初でした。高音質なのは間違い無いのですが、容量がデカくストレージの容量を食うことと、キースイッチやCCコントロールが大量にあるので、ある程度、自分で必要な項目がわかる人でないと使いこなせない可能性があります。
ギターリストの技を再現「Electri6ity」
8種類のギターをクリーントーンで収録した高品質なギター音源です。内蔵エフェクトやアンプシミュレータが付いているし、外部のアンプシミュレータなどを使って音作りをしていくこともできます。ここまではよく聞くサンプリング音源なんですが、最大の特徴はコードを自動で判別して、ギターのボイシングに置き換えてくれる機能です。さらにピッキングやミュートなどの種類が豊富で、CCでコントロールできるパラメーターも大量にあり、よりリアルな演奏を打ち込みで再現できます。特にキースイッチの量はかなりあり、後ほどお見せしますが、kontaktの表示では収まらない量があります。
また幅広い音楽ジャンルに対応していて、ロック、パンク、メタルはもちろん、ブルースやジャズにまで対応できるのが魅力です。
演奏のリアルさと引き換えに、DTM中級者以上でも、ある程度、ギターの知識や経験が必要な音源です。全てのキースイッチやCCコントロールを覚えて使うというよりは、必要なものをセレクトするチカラが必要になる音源です。
収録されている8種類のギター
収録されているギターは、ストラトやテレキャス、レスポール、セミアコ、フルアコなどの8種類が搭載されています。僕もメジャーどころしか知らないし、ちょっと見分けがつかないものもあります。一応、写真も載せてますが、あってるかどうか自信がないものもあるので、こんな感じのやつって思って見てください。(すみません)
Stratocaster
フェンダー社を代表するギターです。エレキギターでパッと思い浮かぶ形だと思います。3つのシングルコイルのピックアップを組み合わせてギターの音を作っていけるので、1本であらゆるジャンルに対応できる万能ギター。プレイヤーやエフェクターによって様々な音に変化します。僕も弾けないのに1本だけ持っています・・・
Telecaster
こちらもフェンダー社を代表するギターで、世界で初めて空洞のないソリッドなボディのギターとして誕生しました。すごくキレのいい音が特徴。バッキング系でもすごく歯切れよくリズムを刻んでくれるので、最近の曲でもかなり使われているギターです。
Les Paul
こちらはギブソン社の代表的なエレキギターで、ギターリストのレスポールさんと共同開発したギターです。ハムバッカーと呼ばれるピックアップを搭載し、ストラトなどに比べると非常にウォームで太い音が特徴です。
P90
これはギターではなくピックアップの種類です。ギブソン社が1940年代から使っているピックアップで、太く暖かいハムバッカーと歯切れのいいシングルコイルのちょうど間くらいの音がするらしいです。フルアコや初期のレスポールなどに使われていたようです。僕は知りませんでした。
Danelectro Lipstick
ダンエレクトロというメーカーのギターです。特徴的なのは口紅の容器を使ったピックアップで、鈴のような透明感を持った音がするそうです。実は見たことも聞いたこともありません。
ES335
ここからは、ボディの芯になるセンター部分をソリッド、両サイドを空洞にしたセミアコスティックのギターです。このES335は、ギブソンが生み出した世界初のセミアコースティックギターで、柔らかいながらもコシのある音が魅力です。使い勝手もよく、ジャズやブルース、ロックやファンク等に使われます。最近はジャズギターをやってる人が持っているイメージが強いです。
Rickenbacker
ビートルズが使ったことで有名なセミアコースティックのギターです。ビートルズをはじめとしたイギリス系のロックグループが使ってたり、日本だとグループサウンズのおじいちゃんが使ってるイメージがあります。
L4
日本ではフルアコ、海外ではアーチトップギターと呼ばれるギブソンのギターです。中身が空洞のボディにピックアップが搭載されいて、生鳴りの音を含んでいるため、甘くて豊かな音色がします。ジャズ系の人たちが弾いているイメージのあるギターです。(写真はL4ではないかもしれないんですすが、フルアコだと思える写真を貼っておきました)
音源の分類
音源は使用方法などに合わせて、複数に分類されています。まず、大きく分けてDI(生音のみ)と、AMPED(エフェクト・アンプあり)に分かれています。DI、AMPEDにはそれぞれフルサンプル、サスティンのみ、サスティントミュートのみと3種類に分かれています。
かなり容量のでかい音源ですので、状況に応じて使い分けてください。
現在の演奏を確認できる「Fretboard」
現在のコードや使用している弦、奏法などを表示するインターフェイスです。この音源は、コードを自動で割り振るオート機能や複数の奏法、演奏するフレットや弦を指定する機能があり、この画面で現在の状況を確認できるようになっています。
アーティキュレーションや操作の調整「Performance」
ビブラートやストラムのタイムなどを調整するところなんですが、見慣れないパラメーターとして一番左にAMTという項目があります。これが、この音源の目玉「アーティキュレーション・モーフィングテクノロジー」です。
この音源ではデフォルトだとベロシティは強弱ではありません。ベロシティ量に応じて、アーティキュレーションが変わったり、ビブラートがかかったりする便利設定になっています。このおかげで、そこそこベタに打っても、ギターらしい演奏になるんです。ただこれが不便に感じる人もいるので、CCでコントロールできる設定に変更もできます。
大量のパラメータを極められる「Setting」
この音源、本当に大量のパラメーターがあって様々なセッティングを行うことができます。たくさんありすぎて、初心者の人や説明書を読まない人はこのあたりで躓きます。
左上のプルダウンメニューを押すと、大きな分類がこれだけ表示されます。さらに、ここからジャンプすると大量の詳細設定が出てきます。自分自身で何を設定するのかを考えて使わないといけないので、ギターの知識をつけておいた方が断然有利です。
すべてを解説すると大変なので、少し代表的なSetting項目をピックアップしたいと思います。
レイテンシーを減らす「Calibration」
この音源はコードを鍵盤のボイシングで弾いても自動判別してギターのボイシングに設定してくれる機能があります。ただ若干レイテンシーがあるらしく、そのレイテンシーをこのCalibrationというところで調整します。また赤枠部分を打ち込み時はSequencerにしておくと遅延タイミングを正確に揃える等、打ち込み用に調整できます。
ビブラートを調整する「Vibrato」
ビブラートに関する様々な調整ができるんですが、特に注目してほしいのは赤枠部分です。ビブラートのコントロール方法をAMT、Aftertouch、CCの3つから選べます。デフォルトはAMTなのでモジュレーションではビブラートがかかりません。ここは要注意です。
ポジショニングを調整する「Fretboard」
ピアノのボイシングでコードを弾いても自動で判別して、ギターのボイシングに置き換えてくれるところがこの音源のいいところなんです。しかしそのままギターソロを演奏させると、とんでもないポジショニングで演奏します。それを避けるために大まかに演奏するフレットを赤枠の部分で選べるようになっています。デフォルトがAuto、後はどこのポジションで演奏させるのかCCのコントロールで選べます。
人間らしい揺らぎを演奏に入れる「Humanize」
この音源、基本的にはベタで打ち込んでいっても、そこそこ演奏できるのがいいところなんですが、このHumanaizeの設定を調整することで、人間らしい揺らぎのある演奏になります。注目は赤枠の部分で、2本同じギターを重ねるダブルトラッキングの場合は、Guitar1とGuitar2を使い分けることで、変な音になるのを防ぐことができます。
ギターの音作りに「Effects」
音源を立ち上げるときにAmpedを選ぶと、こちらのエフェクトとアンプシミュレーターがセットで立ち上がります。この音源だけでギターの音作りも可能です。ただ付属機能といった感じですので、僕はDIの生音を選んでGuitarRigをかけて使う方が音にこだわれるので好きです。
約60もある大量のキースイッチ
この音源は奏法やアーティキュレーション別で約60ものキースイッチがあります。さらにベロシティでアーティキュレーションが変わるものや、2本押しでないと機能しないキースイッチもあり、覚えるのが大変です。よく使うものだけを把握して自分でマッピングするなど対策を考えた方がいいかもしれません。このブログでは、ざっくりどういうものがあるか、ご紹介します。
アーティキュレーションやモードを選択
まずは鍵盤の左側から。ミュート、ハーフミュート、サスティン、ノイズなどのアーティキュレーションを選んだり、コードモード、ソロモードなどを選択するキースイッチが集まっています。おそらく一番よく使うところですね。
ストラムなどの奏法、ストロークを選択
鍵盤の右側はストラムなどジャカジャカかき鳴らす奏法やスライドアップ、ダウンなどの奏法、弦を指定した演奏などができるキースイッチです。僕はストラムの時だけここのキースイッチを使います。
ノイズ系のキースイッチ
さらに-1の鍵盤にもキースイッチがあります。ここで重要なものは、緑色のA-1のキースイッチ。これとプラスしてノイズ系のキースイッチを入れるとリリースノイズになります。ギターソロなんかでうまく入れるとさらにリアリティがアップします。
打ち込みのコツ
いくつか打ち込んでみて感じた打ち込みのコツをご紹介します。
アーティキュレーション、双方をうまく組み合わせる
まずはベタでいいので作りたいバッキングやソロを作ります。その時は手弾きでも大丈夫です。その後に、様々なキースイッチを使ってアーティキュレーションを作っていきます。特に忘れがちなのはベロシティの強弱でアーティキュレーションが変わること。ピッキングの強弱はベロシティではつかないので、要注意だと思いました。
ポジショニングをCCでセレクト
オートでもそこそこポジショニングを作ってくれるのですが、CCのコントロールである程度、フレットをセレクトすると演奏が安定します。特にギターソロやリードギターを打ち込むときは、ポジションをある程度狭めて演奏するとギターらしい演奏になります。
音作りはプラグインで
ギターの音作りは付属してくるものより、外部プラグインの方がいいです。僕はGuitarRigを使っていますが、ギター用のアンプシミュレータを使った方がリアルな音になります。
リアルなエレキギターを求める人におすすめ
多機能だし、特殊なところも多く、使いこなすのは難しいのです。
けれど、あらゆるジャンルで使える複数のギターをサンプリングしていて、さらに様々なアーティキュレーションをキースイッチで変えながらリアルさを追求できるギター音源は、あまりありません。初心者の人にもおすすめの音源です!とは言えない製品ですが、打ち込みでリアルなギターを追求したい人にはおすすめです。ぜひ一度、このリアルさを体験してみてください。