フルートの音はかなりシンセでも再現できるので、massiveでほぼ生フルートの音や横笛を再現する人がいることもしばしばあります。とはいえ、シンセで笛を作るときに欠点があって、フルートならではの音量や音色変化を再現が難しいことです。
そこでおすすめなのが、フルート単体のソロ音源「SWAM FLUTE」。個人的には管楽器の吹奏感を最も再現できている音源だと思います。またV3にバージョンアップして、さらに使いやすく進化しています。
目次
これは音源ではなく楽器のフルート
まずは動画の演奏を。リアルタイム演奏でかなりエクスプレッションを激しめにつけているので、倍音が多めに聞こえますが、どちらかというと音源の限界に調整している演奏なので、実際に打ち込むと、もう少しナチュラルな感じにもなります。
収録されている4種類のフルート
SWAM FLUTEに収録されている楽器は4種類あります。音域が高い方から順番に、ピッコロ、フルート、アルトフルート、バスフルートです。
基本的にフルートを吹く奏者が、ピッコロ、アルト、バスを持ち替えて演奏する印象があります。特にアルトとバスは現代風の大編成オーケストラか、フルートだけのアンサンブルでしかみたことがないです。音質はサックスほどたくさんあるわけではありませんが、クラッシックやjAZZなど音楽ジャンルで若干求められる音質が変わります。
ピッコロ
フルート系の楽器で一番高音が出る楽器です。
オーケストラや金管楽器の中でも埋もれることなく聞こえる高音が魅力。このタイプの音は、騒音の中でも聞こえるため、ピッコロと同じような横笛を西洋の軍隊が歩速行進用に採用していました。この音源でもその点は再現されていますが、ドライな音源のため若干息のノイズがキツめ。空間系のエフェクトで馴染ませるか、ノイズ成分を音源で調整してから使うといいと思います。
フルート
フルート系の標準的楽器です。非常に安定した音で、表現力が豊か。お嬢様やエルフが穏やかな表情で吹いてる印象がありますが、演奏の上手い人のそばで聞いてみるとかなりパワフルです。パンチの効いたお嬢様でないと演奏できませんwこの音源では、ピッコロほどではないものの、ノイズがきつめです。
アルトフルート
大編成のオーケストラでたまに見ますが、滅多にお目にかかれないフルートです。DTMでオーケストラを組むときでも、使わない楽器です。フルートより少し音域が低く、それなりに表現力のある楽器です。
バスフルート
フルート系最低音の楽器で、アルトよりさらにお目にかかる機会がない楽器ですね。フルートアンサンブルくらいでしか見たことないです。
各音源の音域と作曲の注意点
ピッコロからバスまで各音源の音域です。音域の差は、メーカーHPに合わせました。ほぼ運指通りの音域ですが、上下に1〜2音ほど音域が広い音源があります。作曲する際は最高音、最低音は避けて作った方がいいでしょう。フルートでオーケストラを組む場合は、いくつか音質違いが入っているので、それを複数トラックで立ち上げて使ってください。
V3から増えたプリセット
V3からプリセットを選ぶところが2ヶ所に増えました。
①ジャンル分けプリセット
こちらはエフェクト、楽器の音質、各種パラメーターをジャンル別に調節した新規のプリセットになります。
Bansuri、Barocco、Classical、Jazz、Rockなどの種類があり、それぞれのジャンルに的したプリセットが選べます。見慣れないジャンルが出ていますが、bansuriはインドなどで使われる横笛です。Baroccoはバロックで、クラッシックでも昔風の音といった感じです。
楽器・音質変更プリセット
こちらは前からあったフルートの音質プリセットです。
フルートの種類は0〜3(あとSmoothだけ書かれたものがあります)まであり、それぞれに音質バリエーションがあります。0はC FLUTE、FLUTE A、FLUTEB。これにSmoothとだけ書かれたプリセットがあります。好みや曲に合わせて楽器を変えたり、重ねてユニゾンで使う場合などに選んでください。
インターフェイス・操作系解説
V3からインターフェイスが大きく変わりました。
StringsやBrassとインターフェイスを統一した形ですが、楽器が違うのでパラメーターは異なります。特にフルートは他の木管楽器と違うパラメータもあります。
それでは、大きく5ヶ所に分けて解説していきます。
①基本操作
この部分は音源操作の基本です。ピッチベンド、ビブラート、ベロシティ、エクスプレッションの4つのパラメータです。
最重要なのはタンギング表現のベロシティと息の量をコントロールするエクスプレッション。この2つのパラメータがリアルさの追求に必要なパラメータになります。
あとビブラートなんですが、曲に合わせて調整しつつ、薄くかけることで自然な人間の揺らぎも表現できます。ピッチベンドは、多用するとフニャフニャになるので注意してください。
②音質・演奏表現の調節
ここは音質や演奏表現を調節するところです。
GrowlやOverblowなど音を大きく変化させるものや、Fletterという演奏技法、ノイズや倍音のバランスを調整してリアルさを追求するところです。このあたりをこだわって打ち込むとリアルさがさらにプラスされますが、やりだすとキリがないです。オケと混ぜてわかる表現を抜き出して調整することをおすすめします。
また昔からあったフルート独自のStyleパラメータはここに残っています。(後ほど解説します)
③詳細設定
前バージョンは詳細設定が一覧で出てきて、何を触ればいいか手探りでしたが、V3からは分類されて、かなり見やすくなりました。ここにもフルート独自のパラメータがありますので、後ほど解説します。
■Expressivity・・・エクスプレッションやビブラート系の詳細設定
■Play Modes・・・ここは演奏に関わる詳細設定
■Timbere・・・楽器の音質調整
■Pich・・・楽器や音ごとのピッチ調整
■Advanced・・・リアルさを出す微調整の設定
④エフェクト系
EQとリバーブの調整です。ミックスのようにオケになじませるエフェクトではなく、楽器がリアルに響く音作りができるところです。リバーブもそこまで反射があるものではありません。
⑤CC選択や演奏機器の選択
キーボードだけでなく、EWIなどのウインドシンセやRoliのSeaboardなどで演奏できるように、自動的にパラメータを割り振ってくれるプリセットが選択できます。またコントロールしたいパラメータのCC設定ができます。
打ち込みと音作りのポイント
他の音源と同じく、ベロシティとエクスプレッションで操作しますが、少しFluteは頭の出だしのエクスプレッションを強めにしておいた方がフルートっぽくなります。フルートは最初の出だしで他の楽器よりも少しパワーをかける楽器ですから。あとは極力フルートの振る舞いに近いようにオートメーションを書き込んで、理想の演奏に近づけてください。
SWAM Fluteのみの特徴
SWAM音源の中でもフルートは少し変わっているところがいくつかあります。他のSWAM音源に比べて、アタックが短め。これはフルートという楽器の特性でもありますので、打ち込んでいくときの個性みたいなものかなと思っています。そしてインターフェイス上で大きな特徴が2つあります。
ジャンルに合わせて音質を変える「Style」
ここはレバーを動かしていくと、Cassic→Jazz→Funk→Ethnicとジャンルに合わせた音質に変化します。最後のEthnicは異国の横笛ですね。サックスほどではありませんが、様々なジャンルで求められる音質がありますので、それを手軽に調整することができます。
澄んだ音にする「AltFingering」
使ったことないんですが、ある音域以上に作用して、特定の倍音を抑えてくれるらしいです。フルートは高音域になるほと倍音がキツくなるのでキンキンした音になりがち。それを抑えてくれるようなのですが、個人的には使いません。ミックス時にEQで調整する場合もありますが、混ぜたらそこが際立つ重要な音だったりもするので。
V3になってから、このパラメータはメインのインターフェイスには表示されず、上記③のPlay Modeで選択するようになりました。
よりリアルなフルートを求める方に
シンセで作れるフルートの音もなかなかいい線までいけるんですが、リアルさを求めるとSWAM音源に軍配が上がります。特にフルートは専用のパラメータを用意するなどチカラが入っている音源。リアルな音源を求める方は使ってみてください。
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“SWAM音源_レビューまとめ”