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最強ソロサックス音源「SWAM SAXOPHONE V3」レビュー

サックスのソロ音源ってどこかシンセっぽいものが多いんですよね。けれど元サックス奏者の僕が唯一いい音源だなと思う音源があります。それがAudio Modeling社の「SWAM SAXOPHONE」です。
リアルで評判のSWAM音源の中でも初期に出たもので、発売されたときに、飛びついてすぐに買いました。さらに今回はV3へのアップデートがあったため、思い切ってBrassやStringsも含めて購入してみました。(たまたまセールを見つけたのもあります・・・)
今回はアップデートされた音源のポイントなども含めてご紹介しています。

ここまで生サックスを再現できる

V3へのアップデートがどんな感じなのかは上記のメーカーデモ動画をご覧ください。リアルタイムの演奏でここまで来ているので、打ち込むとさらにリアルに聞こえます。

収録されている4種類のサックス

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SWAM SAXには4種類のサックスが収録されていますので、それぞれの楽器の特徴と音源の音質などについてご紹介します。
またこの音源はほぼ生楽器の奏法を再現する必要があるので、最低限の楽器の知識と音のリファレンスが必要です。おすすめのミュージシャンも合わせて記載しました。

収録されているサックスは、ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスの4種類。ソプラノとテナーは、運指上Bbがドの音になるBb管(ベーカンと読みます)。アルトとバリトンは、Ebがドの音になるEb管(エスカン)です。Eb管は音域的に女性ボーカル、Bb管は男性ボーカルと似通っているため、歌物の間奏などで使う場合は、音域の似通ったサックスと組み合わせで使うことが多いです。

また各音源には複数の音質があり、ユニゾンで演奏させるときは音質違いを選ぶと心地よい響きが作り出せます。

歌うように響く「ソプラノサックス」

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サックスの中で一番高い音が出る楽器です。
音質も一番細くリードの振動する音が一番ダイレクトに聞こえるので、チャルメラっぽい感じの音がします。独特の音色とサックス独自の表現力で、クラッシックからJAZZまで、幅広いジャンルで使われます。また人間の声と音質が似ていると言われ、オーケストラの編成に入ることもあります(ラヴェルのボレロが有名)。
プレイヤーとしては、JAZZだとジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーター、本田俊之、あとJAZZ界では嫌われていますが、めっちゃ色気のある演奏をするケニー・Gが有名です。

SWAM音源の一番最初にテスト版で出たのがこの音源でした。(発売になった瞬間、すぐ買いました!)スーパーリアルです。

音色のバリエーションが多い「アルトサックス」

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アルトサックスはソプラノの次に高い音域の楽器です。
アルトの特徴は、これがアルトの音だ!という音がないことです。シンセ音に負けないハードな音から、クラシカルなソフトな音まで様々な音色があり、音楽のジャンルによって求められる音色が変わるため、いろんな奏者がいます。
JAZZでは、ビバップでノリノリのチャーリー・パーカー、ファンキーなキャノンボール・アダレイ、甘い演奏をするアートペッパー。フュージョンで言うと、ハード系でデビッドサンボーンや勝田一樹、ソフト系でデイブ・ウェックル、デイブ・コズ、本田雅人。このあたりを聞くと、全員違う音じゃねーか!と思うと思います。クラッシックの奏者を入れるとさらに違います。奥が深い楽器です。
SWAMのサックス音源としては、初期のまま使うよりは、自分好みの音に作り替える必要がある音源です。

中低音が魅力の「テナーサックス」

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一般の人がサックスというと、このサックスのイメージが大きいと思います。中低域のいちばん美味しい音が出る楽器です。
比較的安定して音が出せるため、演奏に集中できる楽器。クラッシックよりは、JAZZなどの音楽の方が相性のいい楽器だなと思います。同じBb管の楽器のソプラノサックスと持ち替えする奏者が多いです。
有名な奏者としてはJAZZ系でジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツなどがレジェンド。他にStingのEnglishman in newyorkでソプラノも吹いたブランフォード・マルサリス、若手でジョシュア・レッドマン、エリック・アレキサンダーがいます。このあたりを聞いておくとテナーの良さや特徴がわかると思います。

ベースラインからソロもいける「バリトンサックス」

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サックスの最低音の楽器です。
ソロの楽器というよりもベースラインやハーモニーの最低音を担当することが多いです。ただ個人的にはソロもいける楽器だなと思っています。やったことがあるので。
倍音の多い独特の低音にインパクトがあり、ベース楽器としてパンチが効いているんですが、意外に上から下までしっかり音が出るので、吹きやすい印象でした。むしろベースでリズムを刻む方が難しかったです。
個人的に好きなバリトン奏者をあげると、ホーンバンド「Tower of Power」のステファン・"ドク"・クプカ。ここまでバリトンがメインで出てくるバンドも珍しいし、クプカのキャラもたってます。

各音源の音域と作曲の注意点

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ソプラノからバリトンの各SWAM音源の音域とキーです。テナーとバリトンは1オクターブ上げて音域がキー配置されています。
注意すべき点は、高域でも低域でも運指外の音が鳴るようになっています。サックスの場合、高い方はフラジオという倍音を取っていく奏法で鳴らすことができるのですが、低い方は基本鳴らしませんのでご注意ください。またこのフラジオ奏法は、主にフュージョン系ミュージシャンが使う特殊奏法なので、使えない人もいます。
実際、基本の運指で鳴らせる音は、ソプラノサックス(Bb)はG#3~E6、アルト(Eb)はC#3~A5、テナー(Bb)はG#2~E5、バリトンはC#2~A4(Eb)までなので、一般的な曲を書く場合は、この音域で作成してください。ちなみによくある音域図だと高い方の最高音が半音低いとD#かG#になっていると思うのですが、サックスは20世紀後半に新しくキーが追加されたため、もう一音高い音まで基本の運指で鳴らすことができるようになっています。

運指外の高音は倍音を鳴らすフラジオという奏法を利用します。たまにこの音域を普通の音のように吹く人がいますが、普通の奏者はこの音を出すのが難しいです。

V3から増えたプリセット

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V3からプリセットを選ぶところが2ヶ所に増えました。

①ジャンル分けプリセット

こちらはエフェクト、楽器の音質、各種パラメーターをジャンル別に調節した新規のプリセットになります。
Bebop、Classical、Jazz、Pop、Rockなどの種類があり、それぞれのジャンルに的したプリセットが選べます。各種パラメータの設定も変わるため、自分で調整するときの参考になりました。
結構Growl多めの倍音高めのプリセットがありますが、サンボーンまでは行かない感じですね。

②サックスの楽器・音質変更プリセット

こちらは前からあったサックス音質プリセットです。
Saxの種類は0〜4まであり、それぞれに音質バリエーションがあります。Sax0はFlatのみ、Sax1~2はA、BRIGHT、DRY、WARM。Sax3はA、BRIGHT、SMOOTH、WARM、Sax4はSax4のみです。好みや曲に合わせて楽器を変えたり、重ねてユニゾンで使う場合などに選んでください。

インターフェイス・操作系解説

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V3からインターフェイスが大きく変わりました。
StringsやBrassとインターフェイスを統一した形ですが、楽器が違うのでパラメーターは異なります。大きく5ヶ所に分けて解説していきます。

①基本操作

この部分は音源操作の基本です。ピッチベンド、ビブラート、ベロシティ、エクスプレッションの4つのパラメータです。
最重要なのはタンギング表現のベロシティと息の量をコントロールするエクスプレッション。この2つのパラメータがリアルさの追求に必要なパラメータになります。
あとビブラートなんですが、曲に合わせて調整しつつ、薄くかけることで自然な人間の揺らぎも表現できます。ピッチベンドは、多用するとフニャフニャになるので注意してください。

②音質・演奏表現の調節

ここは音質や演奏表現を調節するところです。
GrowlやOverblowなど音を大きく変化させるものや、Fletterという演奏技法、ノイズや倍音のバランスを調整してリアルさを追求するところです。このあたりをこだわって打ち込むとリアルさがさらにプラスされますが、やりだすとキリがないです。オケと混ぜてわかる表現を抜き出して調整することをおすすめします。

③詳細設定

前バージョンは詳細設定が一覧で出てきて、何を触ればいいか手探りでしたが、V3からは分類されて、かなり見やすくなりました。
■Expressivity・・・エクスプレッションやビブラート系の詳細設定
■Play Modes・・・ここは演奏に関わる詳細設定
■Timbere・・・楽器の音質調整
■Pich・・・楽器や音ごとのピッチ調整
■Advanced・・・リアルさを出す微調整の設定

④エフェクト系

EQとリバーブの調整です。ミックスのようにオケになじませるエフェクトではなく、楽器がリアルに響く音作りができるところです。リバーブもそこまで反射があるものではありません。

⑤CC選択や演奏機器の選択

キーボードだけでなく、EWIなどのウインドシンセやRoliのSeaboardなどで演奏できるように、自動的にパラメータを割り振ってくれるプリセットが選択できます。またコントロールしたいパラメータのCC設定ができます。

打ち込みと音作りのポイント

打ち込みのポイントはベロシティとエクスプレッションのオートメーションを細かく書くことです。
ベロシティがタンギングやアクセントの強弱、エクスプレッションが息の量ですね。
音作りのポイントはリバーブなどの空間系です。エフェクトがついていますが、基本はドライな音源なのでミックス時にエフェクトで空間を作って上げないとリアルになりません。これが少し難しいので購入した場合は注意してください。

Jazzの飲む音表現に「Breathy ppp」

ここをアクティブにするとエクスプレッションが弱い時にハーフタンギングでの飲む音を再現できます。ただ息の音しかしないような時もあるため、オケがそれなりの音量の場合はOFFにして、通常モードの小さな音にした方が聞き取りやすい場合もあります。

ユニゾンでの演奏もできる

音源を複数立ち上げてアンサンブル演奏もできます。
この場合、音質を変えたりランダムで動くパラメータを調整したりすることで、リアルなアンサンブルが作れました。サックスの中でアルトがややリアルさに欠けるイメージがありましたが、アンサンブルだと上手くはまります。今度、ビッグバンドやホーンセクションを作ってみて検証したいと思います。

演奏するように打ち込むサックス音源

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リアルなサックスの演奏ができる音源なんですが、かなり細かくオートメーションを書く必要があり、初心者の人には難しい音源だと思います。ただ奥が深い音源ではありますので、リアルな管楽器が欲しいという方は、一度使ってみてはいかがでしょうか。

“参考記事”
“SWAM音源_レビューまとめ”


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