SWAM音源の解説、今回はクラリネット音源です。
シンセで笛系の音は作りやすいのですが、リード楽器の音は意外に難しいんですよね。このクラリネットは有名な楽器でありながら、ブラスバンドやオーケストラに携わっていないとどんな音かわからない楽器なのではないでしょうか。SWAM CLARINETは物理モデリングならではの生音に近い音質や音の振る舞いが魅力の音源。さらにV3にバージョンアップしてとことんこだわれる音源に生まれ変わりました。
それでは解説していきたいと思います。
目次
まずは音をお聞きください
メーカーのリアルタイム演奏動画です。サンプリングでは難しいラプソディインブルーのオープニングのような、滑らかなポルタメントも再現できています。演奏でこの感じなので、オートメーションを書き込めばどのくらいリアルになるかお分かりいただけるでしょう。
収録されている楽器は2種類
収録されているクラリネットは、普通のクラリネットとバスクラリネットです。クラリネットはもう少し種類があるのですが、この2種類に集約されているようです。フルートはあれだけ種類があったのになぜだだろうな?と思ったりします。
クラリネット
普通のクラリネットです。おそらくBbクラリネットを中心に、高音域はEbクラリネットを兼ねているんだと思います。
構造的にはサックスと同じように感じるかもしれませんが、クラリネットは歴史があり、替え指などのキー配列もしっかりしているため、すごく安定した楽器です。管体は木製でできているため響きは柔らかいのですが、季節や湿気によって微調整が必要になる楽器です。使われる音楽ジャンルはクラッシックやブランスバンドが中心ですが、ディキシーランドジャズなど昔のジャズにも使われていました。
バスクラリネット
クラリネットの低音を担当する楽器です。
この音源ではバスクラリネットとアルトクラリネットを兼ねている音源になります。クラリネットらしい柔らかな音が出る低音楽器としてクラッシックやブラスバンドで使用されます。意外なことにベーシストに人気があって、マーカスミラーが演奏するのもこの楽器です。管体は木製がベースで金属部分でできている箇所もあります。何回か吹いたことがあるのですが、とても演奏しやすい楽器でした。
各音源の音域と作曲上の注意点
クラリネットとバスクラリネット、各音源の音域です。
本物の楽器よりやや広めになっているので、そこは注意点です。クラッシックなら全然問題ないと思いますが、ブラスバンドだとSクラとアルトがないので、少し使い方を考える必要があると思います。音源は微調整できますので、JAZZのクラリネットを再現したい方は、少し硬く、やや高域の倍音が強い感じに調整するといいかと思います。
V3から増えたプリセット
①ジャンル分けプリセット
こちらはエフェクト、楽器の音質、各種パラメーターをジャンル別に調節した新規のプリセットになります。
クラッシック、ジャズ、ポップ+デフォルトの4つだけで、他の楽器と比べると少なめです。
②クラリネットの楽器・音質変更プリセット
こちらは前からあったクラリネットの音質プリセットです。
楽器の種類は0〜4まであり、それぞれに音質バリエーションがあります。CLAR0はFlatのみ、CLAR1~2はBRIGHT、WARM。CLAR3はSMOOTH、WARMです。こちらもサックスに比べて少なめです。あとは好みや曲に合わせて楽器を変えたり、重ねてユニゾンで使う場合などに選んでください。
インターフェイス・操作系解説
操作系はV3からインターフェイスが統一され、StringsやBrassと同じになりました。クラリネットの場合はサックスとほぼ同じです。
①基本操作
この部分は音源操作の基本です。ピッチベンド、ビブラート、ベロシティ、エクスプレッションの4つのパラメータです。
最重要なのはタンギング表現のベロシティと息の量をコントロールするエクスプレッション。この2つのパラメータがリアルさの追求に必要なパラメータになります。
あとビブラートなんですが、曲に合わせて調整しつつ、薄くかけることで自然な人間の揺らぎも表現できます。ピッチベンドは、多用するとフニャフニャになるので注意してください。
②音質・演奏表現の調節
ここは音質や演奏表現を調節するところです。
GrowlやOverblowなど音を大きく変化させるものや、Fletterという演奏技法、ノイズや倍音のバランスを調整してリアルさを追求するところです。ただクラリネットではそこまで濁った音質を求めることは少ないかなと重ますので、使わないことも多いです。
③詳細設定
前バージョンは詳細設定が一覧で出てきて、何を触ればいいか手探りでしたが、V3からは分類されて、かなり見やすくなりました。必要に応じてここから設定してください。
■Expressivity・・・エクスプレッションやビブラート系の詳細設定
■Play Modes・・・演奏に関わる詳細設定
■Timbere・・・楽器の音質調整
■Pich・・・楽器や音ごとのピッチ調整
■Advanced・・・リアルさを出す微調整の設定
④エフェクト系
EQとリバーブの調整です。ミックスのようにオケになじませるエフェクトではなく、楽器がリアルに響く音作りができるところです。リバーブもそこまで反射があるものではありません。
⑤CC設定や演奏機器の選択
キーボードだけでなく、EWIなどのウインドシンセやRoliのSeaboardなどで演奏できるように、自動的にパラメータを割り振ってくれるプリセットが選択できます。またコントロールしたいパラメータのCC設定ができます。
打ち込みと音作りのポイント
打ち込みのポイントは他のSWAM音源と同じく、ベロシティとエクスプレッションのオートメーションを細かく書くことです。
ベロシティがタンギングやアクセントの強弱、エクスプレッションが息の量です。あとはビブラートを調整して薄くかけて、人間の音の揺れみたいなものを再現するとよりリアルさが増すと思います。
またかなりドライな音源ですので、インサートのエフェクトで空間は作っていくようにしてください。
音質の完成度は高い
音質の完成度はかなり高いのでオートメーションを書くだけでも、リアルなクラリネットに近づきます。
音色の調整としては、かなり柔らかめの音色なのでJAZZをやる場合は、硬めの音質に調整が必要だと思います。
生楽器に近い演奏ができるクラリネット音源
細かくオートメーションを描く必要がありますが、そのコツさえ掴めばかなりリアルな演奏を再現できる音源です。クラリネット単品の物理モデリング音源は珍しいので、ぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。
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