取材記事

【インタビュー】フルート職人「清水章智」さん・アクセサリーブランド「あらけずり」代表

楽器奏者の彼女にプレゼントしたい!人とは違うアクセサリーを身につけたい! 個性的で美しく、しかも品質のいいジュエリーやアクセサリーを探すのは、すごく難しいですよね。
そんな方におすすめしたいのが、フルート職人さんが一点一点丁寧に磨き上げたアクセサリーブランド「あらけずり」です。 今回は、このブランド誕生の経緯から、素材や品質、ものづくりへのこだわり、そして今後の展開までを代表の清水章智さんに伺いました。
音楽が好きな方へのプレゼントとして喜んでいただける商品だと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
(2024年2月追記! 直接工房にお伺いして、写真撮影させていただきました。またインタビュー追記しました。)

ハンドメイドのフルート専門メーカーで技を磨く

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まずは簡単に清水章智さんの経歴をご紹介したいと思います。
清水さんは管楽器リペアの専門学校を卒業後、有名なハンドメイドフルート専門メーカーの株式会社フルートマスターズに入社。 そこでフルートの匠・豊田桂一氏の指導を受けてフルート製造の技術を学んだ職人さんです。
在職中に製作したフルートはプラチナ、金、総銀製を合わせて300本もあり、会社を代表するプレミアムモデルの製作を任されるプレミアム職人にも選ばれていたそうです。
現在は独立され、フルート専門のリペアやフルート製作の仕事をメインに活動されています。
そんな清水さんが「どうしてアクセサリーの製作を始めることになったのか?」
ここには、2つの出会いがありました。

出会いに導かれてアクセサリー製作へ

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清水さんが、アクセサリー製作を始めようと思ったきっかけは、会社の先輩だったそうです。
「私がフルート製作を志した時、音はもちろんですが、見た目の美しさにもこだわりを持っていました。そんな時に先輩から指輪作りを教わったんです。楽器作りと装身具作りの技術はとても近いことが多いと感じて、趣味のひとつとしてアクセサリー作りをはじめました」
その後、フルート職人として数々の仕事をこなしていた時、あるお客様との出会いで、本格的なアクセサリー作りに向かうようになるそうです。
「たまたまお客様の中に、彫金師の方がいらっしゃったんです。その時は普通にお話をさせていただいただけだったんですが、しばらくしてその方から『よかったら見学に来ませんか』とお声がけをいただいて、彫金の技術を教わることになりました」
人と出会い、技術を学んでいくことで、清水さんの中でひとつの考えが醸成されていったそうです。それが「フルートの部品をアクセサリーにする」というアイディアでした。

もっと多くの人々に、もっと身近なものを届けたい

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フルート製作者として活躍しているのに、どうしてアクセサリーブランドを立ち上げたんだろうと多くの方は不思議に思うかもしれません。
そこには清水さんのものづくりに対するある想いがありました。
「私が製作しているフルートはすべての工程を1人で担当するため、本数も限られ、とても高価なものになってしまいます。身近にフルート仲間もいますが、私が作ったフルートを使っている人はほんのわずか。 なんとか自分が持っている楽器作りの技術で、より多くの人々に、より身近で、心に寄り添えるようなものを届けたいと思ったんです」
現在、多くの楽器メーカーが取り入れている分業生産だと、たくさんの楽器を製造することが可能です。けれど1人ですべての工程を担当するハンドメイドフルートは、一生かかっても数百本がやっと。
楽器職人としてハンドメイドフルート製造というこだわりは譲れない。だけど自分の持つ技術で多くの人々に届けられるものを作りたい。様々な想いをつなげてくれたものが「あらけずり」だったそうです。

ジュエリーと同じ高品質な貴金属を使用

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楽器の知識が少しでもある方はご存知だと思いますが、フルートには金、銀、プラチナなどの貴金属が使われています。しかし、楽器で使う貴金属とジュエリーやアクセサリーで使う貴金属は品質が違ったりするのではないかと思ったので、伺ってみました。
「フルートとジュエリーの素材は同じものが多くあります。『あらけずり』ではフルートでもアクセサリーでも使われている素材を使用しています。例えばシルバーだとAg925、ゴールドだとK18のイエローやK18のピンクですね。」
現在販売中のアクセサリーは有名ブランドと同じ素材を使っているそうです。ただフルート職人としては、少し使ってみたい貴金属もあるそうです。
「多くのフルーティストが「金のフルート」と聞いてイメージするのがK14のピンクゴールドだと思います。これを「あらけずり」のラインナップに入れたいんですよ。けれどジュエリーやアクセサリーの世界で使われる地金としては、あまり一般的ではないんです」
ジュエリーやアクセサリーは素材も選択基準のひとつ。フルート職人としての想いを持ちながらも、アクセサリーをお求めになるお客様のニーズに応えているところがステキな職人さんだなと思いました。

フルートが持つ磨き上げた美しさを追求

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他のジュエリーやアクセサリーブランドとの違いは何ですか?とお尋ねすると、「追求する美しさの基準や価値観だ」と清水さんは教えてくれました。
「良くも悪くもフルート職人がやっているブランドなので、かなりの部分で楽器に対する美しさや価値観を適用しています。特にヤスリで磨き上げるときに差が出ますね」
と清水さん。実際にはどんなふうに違うのか聞いてみると、
「私の感覚だと、ジュエリーの世界ではキズひとつないツルッとした質感を出すと同時にヌルッというかヌメッとした形になっている部分が多いと思います。傷ひとつなくキレイに磨ける反面、シャープさが失われる傾向があるんです」
「しかし、私が追求してきた楽器の価値観は、シャキッとした形状にあります。傷が残らないように磨き上げるのが難しいんですが、そこを経験や技術を使って美しく仕上げていきます。お客様には、そんな楽器本来の美しさを身近に感じていただきたいんです」
楽器の美しさを大切にしながらアクセサリーとしての品質を追求すると、そこには高度な技術が要求されることも多くなるそうです。
わずかな力加減や角度で変わるヤスリがけへのこだわりは、お話から強く伝わってきました。

ブランド名の由来にもなった削りの美しさ

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楽器の部品を仕上げ、美しさを決めるヤスリがけ。それは基本でありながら、奥が深く、職人の実力を決定づけるほどの重要な技術だそうです。
「ヤスリがけは初心者ほど怖がって目の細かいヤスリを使いがちなんですが、手前を削ってしまったり奥を削ってしまったりして、必然的に往復回数が増えて結果的に形の悪いものになります。だから粗いヤスリでザッと一発で決める。すると綺麗にシャキッと仕上がるんです。ブランド名の『あらけずり』も、ヤスリがけでものを削って形にするイメージから付けました。初心を忘れない、思い切ってやるといった想いも込めているんです」
「あらけずり」は、一瞬アクセサリーブランドに相応しくないと思ってしまう言葉。けれど、奥底に芯があり、将来の成長を感じさせる言葉でもあります。
ただのファッションとして身につけるだけではなく、未来への希望を奏でるひとつのアイテムにしてほしい!という作り手の想いが込められたブランド名でもあったんです。

おすすめのアクセサリーは「あいすれば」

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「あらけずり」にはアクセサリーに使うフルートの部品によっていろんなシリーズがあります。またネックレスやピアスだけでなく、ネクタイピンやカフスボタンもあり、男女共に使えるラインナップが充実しているんです。そこでおすすめのアクセサリーを伺ってみました。
「あえてひとつ上げるとするなら『あいすれば』シリーズです。フルートのAisレバーをモチーフにしたもので、ブランドの立ち上げとともに発表したアクセサリーですが、今なお一番人気です。 形のシンプルさと可愛らしさ、『こう見えて”じつは”フルートの部品』というさりげなさが魅力だと思っています。」
オーケストラのチューニングで使うAの音から半音上のA#を鳴らす時に使うAisレバー。
一歩前に進むイメージがあり、日本語の「愛す」という語幹に似ているところも支持されているポイントだそうです。
ペンダントやイヤリングはもちろん、最近はひねりを加えてリング(指輪)にしたアクセサリーも発売。注文が途切れない状況が続いているそうです。

ものづくりから場所づくりへ

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今後、どのようなブランド展開をしていきたいかと尋ねると、このような答えをいただきました。
「現在は自宅を仕事場にして製作しているんですが、できれば住居とは別に工房と呼べる場所、お客様が立ち寄りやすい場所を持つことができたら嬉しいですね。そのためにも、アクセサリーの販売だけでも生計が立つ状態を目指したいです」
人々に寄り添うものづくりから、人々がつながる場所づくりへ。 清水さんが持つひとつの夢が叶う時は、きっと来る。お話を伺いながらそう思いました。

自分の技術を、次の世代にも伝えたい

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最後に、清水さん自身がフルート職人として、今後、取り組んでいきたいことも伺いました。
最後のこの部分は、いただいた文章をそのまま掲載したいと思います。
「私がマスターズ時代に豊田さんから教わった楽器製作の技術は、誰にも伝えることが出来ていないままです。
当初はこのことに強い罪悪感を感じ、誰かに伝えなければという思いがありました。
しかし、昨年読んだ『鬼滅の刃』と言う漫画の中にある作品内最強の剣士のセリフで 『自分たちは特別ではない、後継者は育てなくても上を目指す者は自然と同じところに行きつく。』みたいな部分があって、心の底から腑に落ちました。
よく考えたら「美しい楽器を作る」と言う一点をめざす者にとってはそれほど特別なことをしている訳ではなかったなと。
メーカーを立ち上げハンドメイドフルート製造の技術やシステムを構築した豊田さんは神かがっていると感じますが、私自身はその中からほんの一部を教わっただけのただの人です。
ただ「美しい楽器とは」という価値観の部分は重要とも感じています。 何かを背負うと言うほど重くは感じていませんが、次の世代へ何かを伝えることが出来たら良いかもなと思っています^^」

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