最近何かと話題のUJAM。昔、Cubaseで搭載していたVirtual Guitaristシリーズを復活させたイメージのある音源メーカーでしたが、今はかなり大量の音源を出していてびっくりしました。
たまたまお正月にセール品を探していてると、UJAMのお得バンドル商品があったんです。思わずツイートするとメーカー担当の人に捕捉されてしまいました。しかもツイートした商品が売り切れてしまい・・・とはいえ、買います的なことを言ってしまったので、IRON2というギター音源を購入しました。
実はこの音源、前バージョンをこっそり持ってましたので、進化のポイントも含めてレビューしたいと思います。
目次
はやい、うまい、音源メーカー「UJAM」
UJAMというメーカーを一言で表すとすると「はやい、うまい(やすい)」だと思います。
使い方はすごく簡単で打ち込みのしやすさを重視しています。音質はスーパーリアルな音源ではないんですが、その分、高速に自分の作りたい曲を目指せるという印象を持ちました。
かなり割り切った音源が多いですが、目的がはっきりしている人には使いやすいと思います。初心者の人でもさくっと曲ができてしまう音源が多いメーカーですね。
簡単にギターバッキングが作れる「Virtual guitarist」シリーズ
Virtual guitaristは昔、Cubaseに搭載されていた音源で簡単にギターのバッキングが作れるものだったと聞いてます。(その時代はCubaseを持ってないので)それをUJAMが復活させるということで話題になりました。
UJAMが現在発売しているギター音源は、CARBON、IRON、AMBER、SPARKLE、SILKと5種類あり、制作する音楽ジャンルやギターの種類で選べるようになっています。
僕はあとから出てきたSPARKLE以外を持っていて、ちょうど仕事が忙しい時期にセールで買ったため、存在自体も忘れてました。ごめんなさい。
ロック系ギターのバッキング制作に強い「IRON2」
UJAM製品はジャンルや用途、楽器などで音源を分けてくるメーカーです。このIRON2もロック系のギターに特化した作りになっていて、入っているPhraseパターンはロック系に特化しています。またソロは頑張れば打ち込めますが、どちらかと言えば、歌物などのバッキング制作に強い音源だと思ってもらえるといいかなと思います。
デモを聞くと少し味気ないかなと思われる方も多いと思いますが、ミックス時の空間表現や外部アンプシミュレーターを使うことで自分好みの音に変えられるしリアル感の調整も可能です。
IRON2の2つの構造
IRON2は前バージョンのIRONに比べてバッキングパターンが減っているらしいんですが、それを上回る自由度が追加されていて、多彩な演奏ができるようになっています。そちらは後ほど紹介しますので、先に音源の大きな構造からご紹介していきます。
構造は大きく分けて2つで「①ギターの音作り、②バッキングパターン作り」です。
①ギターの音作り部分
こちらがギターの音色作りになります。
①ギター本体の調整・・・ピッキングする場所や音のキャラクター選びができるところです。
②エフェクター・・・こちらはStompboxとFinisherの2種類を選べます。
③アンプ・・・ここでギターアンプによる音質調整を行います。
他のアンプシミュレーターを使いたい人のために、エフェクトやアンプを切ることもできます。アンプをDirectにして別のアンプシミュレーターを使うと、より自分好みの音作りができると思います。
②バッキングパターン作り部分
こちらの下部が「Style」と呼ばれているバッキングパターンを作る部分です。ここには2つのモードがあり、赤枠のタブで切り替えます。
①Playerモード・・・バッキングパターンを組み合わせて作っていくモード
②Instrumentモード・・・自分でバッキングパターンを打ち込んでいくモード、頑張ればソロもできる
特に②がIRON2で追加された目玉機能です。ここは後ほど詳しく解説します。
プリセットを選ぶところは2箇所
プリセットを選ぶところは2箇所です。
①ギターの音色とStyle(バッキングパターン)がセットになったプリセットを選ぶことができます。
②こちらはStyleだけを選ぶところです。
前バージョンと比べると①のプリセットはかなり増えました。300くらいあるらしいです。それに対して、Styleは減ってました。その分自由度が増えたので、いろんなことができます。
バッキングが簡単に作れる「PLayer」
ここからはPlayerモードとInstrumentモードの違いを書いていきます。
まずはパターンを組み合わせてバッキングが作れるPlayerモードからです。4箇所に分けて解説します。
①音の強弱、長さ
すべてのコードトーンの強弱や長さを調整するところです。
ピッチベンドが音の強弱、モジュレーションが音の長さですね。コードトーンの単音だけを調節することはできません。この二つを調整することでノリがすごく出てきます。最後の微調整に動かすといいと思います。
②全スタイル共通の「Common Phrase」
ここはすべてのスタイルに共通のバッキングパターンです。
4分、8分、16分の刻みを中心に奏法違いをキースイッチで入れ替えていくパターンです。ロックっぽい刻みの基本はここで操作するんですが、これだけだとかなり単調になるので、次でご紹介するStyle Phraseと組み合わせて使います。
③バッキングの雰囲気を決める「Style Phrases」
こちらがStyleごとに異なる様々なバッキングパターンを切り替えられるところです。
Styleを選ぶときはここを中心に選んでください。どのスタイルも基本的にはロックっぽい曲のフレーズです。このStyleだけでも結構単調になるので、Commonフレーズと切り替えながらパターンを組んでいくとかなりいい感じのバッキングになります。
④バッキングのコードを決める「Play Range」
左側の青い部分がバッキングのパターンを決めるのに対し、赤い部分がバッキングのコードを決める部分です。
1本指で押さえるとパワーコード、複数の指で弾くとそのコードになります。ボイシングはオートなので音源におまかせになります。あとKey設定をするとそのkeyにあったパワーコードとSus4だけを打ち込めるようになります。
あとはDropDを選べます。
MIDIデータを書き出せる!
便利になったなと思ったのは、Common PhrasesやStyle PhrasesをコピペでMIDIデータとして貼り付けられることですね。ただこのMIDIデータはIRON2だけでしか使えません。
上の写真はStyle Phrasesを貼り付けたものなんですが、ひとつのキースイッチだけで鳴るフレーズも、実は様々なフレーズの組み合わせでできていたことがわかりました。あとベロシティもそれなりに打ち込むのも大切なようでした。
C#-2に注意
このコピペするMIDIデータなんですが、実は次でご紹介するInstrumentモードで打ち込んだデータになります。PlayerモードでもInstrumentモードで打ち込んだMIDIデータを利用することができるんですが、その際にトリガーとなるキースイッチがありC#-2をベタで打ち込んでおく必要があります。このC#-2を打ち込んでいる間だけ、PlayerモードでもInstrumentモードのMIDIデータが機能するようになります。
例えば、基本はIRON2のフレーズを使いながら、キメの部分だけ自分で作ったInstrumentモードのデータを使いたいというときに効果的です。
自分でバッキングを作れる「Instrument」
こちらは自分でバッキングパターンだけでなく、アルペジオや、がんばれば簡単なギターソロまでできるモードです。
こちらも操作系のキースイッチを3つに分けてご紹介していきます。
①ピッチベンドと音の長さ調整
こちらのモジュレーションはPlayerモードと同じく音の長さなんですが、ピッチベンドは普通にピッチベンドになってました。細かな強弱は③のベロシティでつけるとうまくいきました。
②ピックを持つ手のコントロール「KeySwitch」
ここはピックを持つ手をコントロールするキースイッチで、複数のコントロールを組み合わせて使います。
■「緑」がトリガーモードのON/OFFで、③の鍵盤でコードを指定するだけで音が鳴るモードです。ここをOFFにすると②の部分でピッキングのキースイッチを指定しないと音がならないモードになります。単純な刻みならONで打ち込んだほうが作業が速いです。
■「ピンク」が和音を引くときのストローク系
■「赤」がアーティキュレーション系
■「青」の前半はスライドなどの双方、
■「青」のC2以下の「Piching Selection」というところが、コードトーンを単音のみピッキングするキースイッチです。
特にこのモードの見せ所が「Piching Selection」だと思いました。コードトーンを単音ずつ出せるので、コードのボイシングを自分で決められます。さらに細かく打ち込むことでソロ演奏も可能です。
ただノートと同じ位置にピッキングの指定をして、ソロ演奏を打ち込むのは結構大変です。(ギター音源はどれも大変なところはありますが・・・)
あとハーモニクスはなかったです。
③はコードを指定する「Play Range」
ここはトリガーを選ぶとPlayerモードとほぼ同じです。ただトリガーオフの場合は、②でピッキングを指定しないと音が鳴りません。
Keyを指定するとパワーコードとSus4だけが鳴らせるのは共通。Drop Dを指定できるのも共通です。
音の強弱はこちらのベロシティが重要になってくるので、打ち込む際は丁寧に調整するとリアルになると思います。
使ってみた感想!
ここからは使ってみた感想を書いていきたいと思います。
音が良くなりました!
前バージョンのIRONから比べると音質がかなり改善されました。そこそこリアルなので、ミックス時に空間系をうまく使えば音源そのままでも使えると思います。
ただアンプシミュレーター持っている人は、そっちを使った方がよりリアルさが増す気がします。またDirectというアンプ設定が追加されて、アンプシミュレーターが使いやすくなりました。
曲作りの幅が広がった
前バージョンのIRONはバッキングパターンを演奏するだけで、もう少し違う感じにしたい!というときに対応できませんでした。
けれどIRON2は自分でリズムやアーティキュレーション、ボイシングまでコントロールできるので、ギターが弾けない人でもちょっと頑張れば理想のギターバッキングを手に入れられるようになっています。ここは大きな進化だと思いました。
フレーズパターンはロック中心だが
Playerモードのフレーズはロックっぽいもの中心ですが、Instrumentモードの方はジャンルの汎用性があると思いました。打ち込みの技術は他のギター音源に比べると簡単ではありますが、それなりにギターの知識があった方がいい曲に仕上がると思います。
期待以上にいい音源でした
ロック系の曲しか打ち込まないという方にはかなりいいギター音源だと思います。
ギター音源といえばElectri6ityなんかが有名ですが(僕も持ってますが)結構打ち込むのが難しいんですよね。それに比べればIRON2は打ち込みが圧倒的に簡単です。音源の特徴を掴めば、自分の作りたい音源のバッキングを最短距離で作れるのは間違いないと思います。僕もロックっぽい曲を作るときに使ってみたいと思います。
ご興味を持たれた方は、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。