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最強ソロサックス音源「SWAM SAXOPHONE」レビュー

サックスのソロ音源ってどこかシンセっぽいものが多いんですよね。けれど元サックス奏者の僕が唯一いい音源だなと思う音源があります。それがAudio Modeling社の「SWAM SAXOPHONE」です。
リアルで評判のSWAM音源の中でも初期に出たもので、発売されたときに、飛びついてすぐに買いました。なかなかネットで発表する曲では使ってないんですが、打ち込みだけはまめにやってる音源なのでご紹介したいと思います。

ここまで生サックスを再現できる

実際どんな音がするのか、いい例を探したところ、この映像がいちばんでした。リアルタイムの演奏ですが、ここまでサックスの音とノリを再現できる音源です。

収録されている4種類のサックス

Swamsax2

SWAM SAXには4種類のサックスが収録されていますので、それぞれの楽器の特徴と音源の音質などについてご紹介します。
またこの音源はほぼ生楽器の奏法を再現する必要があるので、最低限の楽器の知識と音のリファレンスが必要です。おすすめのミュージシャンも合わせて記載しました。

収録されているサックスは、ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスの4種類。ソプラノとテナーは、運指上Bbがドの音になるBb管(ベーカンと読みます)。アルトとバリトンは、Ebがドの音になるEb管(エスカン)です。Eb管は音域的に女性ボーカル、Bb管は男性ボーカルと似通っているため、歌物の間奏などで使う場合は、音域の似通ったサックスと組み合わせで使うことが多いです。

また各音源には複数の音質があり、ユニゾンで演奏させるときは音質違いを選ぶと心地よい響きが作り出せます。

歌うように響く「ソプラノサックス」

サックスの中で一番高い音が出る楽器です。
音質も一番細くリードの振動する音が一番ダイレクトに聞こえるので、チャルメラっぽい感じの音がします。独特の音色とサックス独自の表現力で、クラッシックからJAZZまで、幅広いジャンルで使われます。また人間の声と音質が似ていると言われ、オーケストラの編成に入ることもあります(ラヴェルのボレロが有名)。
プレイヤーとしては、JAZZだとジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーター、本田俊之、あとJAZZ界では嫌われていますが、めっちゃ色気のある演奏をするケニー・Gが有名です。

SWAM音源の一番最初にテスト版で出たのがこの音源でした。(発売になった瞬間、すぐ買いました!)スーパーリアルです。

音色のバリエーションが多い「アルトサックス」

アルトサックスはソプラノの次に高い音域の楽器です。
アルトの特徴は、これがアルトの音だ!という音がないことです。シンセ音に負けないハードな音から、クラシカルなソフトな音まで様々な音色があり、音楽のジャンルによって求められる音色が変わるため、いろんな奏者がいます。
JAZZでは、ビバップでノリノリのチャーリー・パーカー、ファンキーなキャノンボール・アダレイ、甘い演奏をするアートペッパー。フュージョンで言うと、ハード系でデビッドサンボーンや勝田一樹、ソフト系でデイブ・ウェックル、デイブ・コズ、本田雅人。このあたりを聞くと、全員違う音じゃねーか!と思うと思います。クラッシックの奏者を入れるとさらに違います。奥が深い楽器です。
SWAMのサックス音源としては、初期のまま使うよりは、自分好みの音に作り替える必要がある音源です。

中低音が魅力の「テナーサックス」

一般の人がサックスというと、このサックスのイメージが大きいと思います。中低域のいちばん美味しい音が出る楽器です。
比較的安定して音が出せるため、演奏に集中できる楽器。クラッシックよりは、JAZZなどの音楽の方が相性のいい楽器だなと思います。同じBb管の楽器のソプラノサックスと持ち替えする奏者が多いです。
有名な奏者としてはJAZZ系でジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツなどがレジェンド。他にStingのEnglishman in newyorkでソプラノも吹いたブランフォード・マルサリス、若手でジョシュア・レッドマン、エリック・アレキサンダーがいます。このあたりを聞いておくとテナーの良さや特徴がわかると思います。

ベースラインからソロもいける「バリトンサックス」

サックスの最低音の楽器です。
ソロの楽器というよりもベースラインやハーモニーの最低音を担当することが多いです。ただ個人的にはソロもいける楽器だなと思っています。やったことがあるので。倍音の多い独特の低音がインパクトがありベース楽器としてインパクトがあるんですが、意外に上から下までしっかり音が出るので、吹きやすい印象でした。むしろベースでリズムを刻む方が難しかったです。
個人的に好きなバリトン奏者をあげると、ホーンバンド「Tower of Power」のステファン・"ドク"・クプカ。ここまでバリトンがメインで出てくるバンドも珍しいし、クプカのキャラもたってます。

各音源の音域と作曲の注意点

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ソプラノからバリトンの各SWAM音源の音域とキーです。テナーとバリトンは一オクターブ上げて音域がキー配置されています。
注意すべき点は、高域でも低域でも運指外の音が鳴るようになっています。サックスの場合、高い方はフラジオという倍音を取っていく奏法で鳴らすことができるのですが、低い方は基本鳴らしませんのでご注意ください。またこのフラジオ奏法は、主にフュージョン系ミュージシャンが使う特殊奏法なので、使えない人もいます。
実際、基本の運指で鳴らせる音は、ソプラノサックス(Bb)はG#3~E6、アルト(Eb)はC#3~A5、テナー(Bb)はG#2~E5、バリトンはC#2~A4(Eb)までなので、一般的な曲を書く場合は、この音域で作成してください。ちなみによくある音域図だと高い方の最高音が半音低いとD#かG#になっていると思うのですが、サックスは20世紀後半に新しくキーが追加されたため、もう一音高い音まで基本の運指で鳴らすことができるようになっています。

運指外の高音は倍音を鳴らすフラジオという奏法を利用します。たまにこの音域を普通の音のように吹く人がいますが、普通の奏者はこの音を出すのが難しいです。この音源では、普通の音階を登っていくとフラジオの音域に到達しますが、OverBlowというボタンをキースイッチで操作することで、オクターブ下の鍵盤でもフラジオ感のある音が出せます。

打ち込みと音作りのポイント

打ち込みのポイントはベロシティとエクスプレッションのオートメーションを細かく書くことです。ベロシティがタンギングやアクセントの強弱、エクスプレッションが息の量ですね。すべての木管音源に関わることですので、下記の記事にまとめてあります。
音作りのポイントはリバーブなどの空間系です。めちゃくちゃドライな音源なので楽器自体の響きを作ってサックスの音を作らないとリアルになりません。これが少し難しいので購入した場合は注意してください。

“参考記事”
木管楽器ソロ音源最強!「SWAM 音源」使い方&まとめレビュー

演奏するように打ち込むサックス音源

Swam1

リアルなサックスの演奏ができる音源なんですが、かなり細かくオートメーションを書く必要があり、初心者の人には難しい音源だと思います。ただ奥が深い音源ではありますので、リアルな管楽器が欲しいという方は、一度使ってみてはいかがでしょうか。


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